りんごの友だち

名前も知らない人からりんごが届いた。

先日、友人の誕生日のお祝いで屋形船に乗った。隅田川を走る船の中から、いつもと違う視点で東京をみていると、どこか知らない街のように感じた。(年明けに、カラックスの『ポンヌフの恋人』を観たばかりだったので、主人公のミシェルが水上バイクでセーヌ川を疾走するシーンを思い出した。あれこそ、いつもとはかなり違うセーヌ川の見え方で最高だった。)
ウミネコかユリカモメかが数羽、ぷかぷかと船のすぐそばを浮かんでいて、彼らはいつもこの景色を見ているんだと思うと羨ましかった。

乗り合い船なので、ほかのお客さんたちと、どこから来たのか、私たちは今どのあたりを走っているのかなどを話しながら船に揺られる。
向かいの団体席に座っていたおじいさんは長野県でりんご農家をしていて、家族や果樹園のスタッフたちと東京観光に来たという。
20年前に仕事の都合で横浜に住んでいたそうで、友人が横浜在住ということもあって話が弾んだ。
長野に帰ったらりんごを送ると言うので、連絡先を書き留めたメモを渡し、下船の際には握手をして別れた。
お互いご機嫌な酔っ払いだったので、友人と「本当に届くのかな」、「いや忘れられちゃうでしょ」なんて言いながら帰ったのだが、今日、「新鮮な味をどうぞ!」と書かれた箱が届いた。
箱からは、爽やかな香りが漂う。開けてみるときれいに並んだ真っ赤なりんごたち。
今日もたまたまその友人と会っていたので、さっそく一緒に食べた。
しっかり甘いけれどさっぱりしていて、とても美味しかった。
友人とともにお礼の電話をして、そこで初めておじいさんのお名前を聞いた。今まで出会ったことのないすてきな名前だったので思わずそう伝えると、電話口で「そんな〜」と言いながらキャッキャと笑っていて、つられてこちらも笑った。
思わぬところで新しい友だちができて嬉しい。水の上でしか会っていないので、今度はりんごを狩りに会いに行きたい。

2026.1.24