展示後記Ⅱ

今回の展示では、受付にひっそりとラジオを置いていた。
このラジオからは、実際に流れているラジオ放送、第二次世界大戦下や終戦直後の日本で流れていたラジオの音源、
そして、架空のニュース音声をミックスした音を流していた。
(展示会場は地下なので、うまく電波が拾えず、調子が悪い日もあったけれど…。)
中には、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を知らせるニュースや、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザへの地上作戦を開始したという速報も入っていた。

架空のニュースは、大好きな劇団、「南極」の脚本家であるこんにち博士に書き下ろしていただいた。
全国の動物園や水族館で生きものが誕生したり、死亡したりしたというニュースや、南アフリカ沖にザトウクジラの群れが集まっているというニュース。(ちょうど展示が始まる1週間ほど前に、千葉県館山市にザトウクジラの群れが座礁したというニュースがあった。この時にはもう原稿は書き上がっていたので、偶然のつながりに驚いた。)
人の営みだけで地球は回っているわけではないということを伝えたくて、いろいろな生きものたちのニュースを入れてほしいとお願いした。
そのほかにも、"地球B"(どこ?)で流れているハイウェイラジオなど、たくさんの架空のお話を書いていただいた。
真面目に聞いていたら、思わずクスッと笑みがこぼれてしまうようなニュースたち。
草薙球場(どこ?)で行われている架空の野球実況中継では、アメリカの伝説的野球選手、ベーブ・ルースが登場していた。
(ベーブ・ルースは、実際に1934年に日米間の親善試合のために来日している。)

このラジオの原稿を、南極の劇団員の古田絵夢さん、ユガミノーマルさん、揺楽瑠香さん、和久井千尋さんに読み上げていただき、録音した音声をミックスした。

私は、普段からラジオでザッピングをするのが好きだ。
ラジオのアンテナは時空を超えた音を拾うってしまうのではないかというワクワク感がある。
それで、今回の展示にラジオを置くことは最初から決めていた。
架空って書いたけれど、架空じゃないかもしれない。現実と非現実のさかい目なんて、もはやわからない。
"地球B"には、爆弾がないと良いな。

2025.9.4